ウォッチメンとドゥームズデイ・クロック

 大友克洋は1954年4月生まれ、アラン・ムーアは1953年11月生まれで同世代なわけだが、『AKIRA』は82年~90年の連載、『ウォッチメン』は86、87年の連載で同時代。
 大友以前大友以後、ウォッチメン以前ウォッチメン以後。
 どちらも冷戦末期の全面核戦争をベースにしたパラノイア妄想譚だ。
 『AKIRA』はアキラ鉄雄が去り廃墟になったネオ東京の今後はボンクラの金田に任すというオチだったが、ウォッチメンも超人無き後はボンクラのシーモアの選択に託すというオチで、むろん今後の世の中はお前らボンクラ読者の手にかかってるんだその足りない頭で考えろとのムーアなりのエールなのだが…。


ウォッチメン』(小学館集英社プロダクション)

 その30年後『ウォッチメン』の続編として描かれたのがジェフ・ジョーンズの『ドゥームズデイ・クロック』。
 シーモアは雑に一文だけで殺されているのだった。
 そして描かれるのはスーパーヒーローの復活。
 そういうところだぞジェフ・ジョーンズ。


ドゥームズデイ・クロック』(小学館集英社プロダクション)

 『ドゥームズデイ・クロック』はウォッチメン世界から去ったDr.マンハッタンがDCユニバースに転移し歴史に介入、悪意を振りまくってたという話だけど、そもそも自分で世界を創造すると言ってたDr.マンハッタンがわざわざDCユニバースに粘着する意味がないという。


ウォッチメン』(小学館集英社プロダクション)

 このDr.マンハッタンはアラン・ムーアのことで、ムーアのせいでDCが汚されたことを表現しているんだというがさてそれはどうか。
 DCから離れてオリジナルコミックを描いてるムーアがなぜDCに干渉しなければならないのか。
 Dr.マンハッタン=ムーアの影で存在を消してる人物がいるのではないか。
 DCユニバースの歴史をいじくって遊んでいた人物、そう1999年の『Stars and S.T.R.I.P.E. 』から第一線でDCメインライターとして活動していたジョフ・ジョーンズその人だ。
 『ドゥームズデイ・クロック』のDr.マンハッタン=ジェフジョン。
 『ドゥームズデイ・クロック』のマンハッタンはウォッチメンの彼とは別人。
 Dr.マンハッタン=ジェフジョンと見れば、『ドゥームズデイ・クロック』はジェフジョンの自己言及コミックということになりますわな。
 自分でDCユニバースに介入し自分で解決する。マッチポンプぽいですな。まるでオジマンディアスのように。

 『ドゥームズデイ・クロック』のプロローグ『DCユニバース:リバース』でパンドラはムーアのことを言ってるという言説がありますが、違うね、パンドラはジェフジョン本人に啖呵切ってるんだよ。


DCユニバース:リバース』(小学館集英社プロダクション)





ハレンチ学園 3巻』(小池書院)
参考書籍

ウォッチメン
それまでのヒーローものアメリカンコミックを脱構築したポストモダンコミック。2010年代の翻訳アメコミブームでもっとも売れた本。
AKIRA
それまでのSFもの日本漫画を脱構築したポストモダン漫画。
最終刊の大東京帝国のくだりはヤンマガ連載時にはなく、もとは先の見えない展開で終わってるところに『ウォッチメン』との類似があるだろう。
ドゥームズデイ・クロック
NEW52以来のストーリーの総決算…のはずが発行遅れたせいか妙に浮いた感じに。
DCユニバース:リバース
『DCユニバース:リバース』『バットマン/フラッシュ:ザ・ボタン』『ドゥームズデイ・クロック』で3部作。
パンドラの死は全く意味が無かったが、オチで希望とか言ってれば読者は気にしないのだった。
ハレンチ学園
永井豪の出世作。68~72年に少年ジャンプで連載。70年に展開された「ハレンチ大戦争」でキャラクター皆殺しのお約束破りをおこなった。
イキドマリの叫びは自分の都合でキャラクターの生死を弄ぶ作者への全キャククターを代表する怒りだ。
(2023.04.26)

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